2025年10月
公益社団法人日本獣医学会理事長(代表理事)
内田 和幸
2025年9月より猪熊 壽 前理事長の後任として公益社団法人日本獣医学会理事長を拝命いたしました東京大学農学生命科学研究科 獣医病理学研究室の内田和幸です。これまで会計および庶務担当として務めた経験を本学会の運営に生かしたいと存じます。獣医学会の特徴は所属研究団体の活動にそのアクティビティを依存していることだと理解しております。各分科会におかれましては、これまで以上に獣医学の学際領域全体に有益な学術活動を展開していただけると幸いです。本学会としては各分科会の公益活動をより強力にサポートする体制を構築してゆきたいと考えます。
日本獣医学会が2012年に公益社団法人になってから12年以上経過しました。しかし公益とは何かという基本的な部分が、いまだ完全に咀嚼はできておりません。2025-2026年度から本会の理事会に外部理事・監事をおくことが義務付けられ、内閣府の指導に従って、今年度はそれぞれ小澤壯行外部理事、石橋朋子外部監事に就任をお願いし、総会でご承認いただきました。これは公益法人としての活動の透明性を担保するための方策と理解しております。ご両名には是非忌憚のない意見をお寄せいただき、本学会の公益社団法人としての活動をサポートいただけると幸いです。またダイバーシティの観点より、女性評議委員を理事として複数推薦すると同時に、石塚真由美理事を副理事長に推薦させて頂きました。欧米の獣医学関係の理事会では、半数以上を女性が占めるのが普通ですので、本会の取り組みはまだ十分とはいえません。今後も継続して努力が必要な課題となります。
2020年初頭に始まったCOVID-19パンデミックは、学会活動にも大きな影響を与えました。理事会や委員会会議はオンライン開催が主体となりました。本会の学術集会もオンライン開催が続きましたが、2024年9月の第167回学術集会より完全対面形式が復活しました。しかしながら対面開催のノウハウが途切れておりましたので、再開にあたり主宰機関には多大なご負担をかけたことと存じます。学術集会開催は本会の重要項目です。継続して事業を行うためには、主宰機関の負担をできるだけ軽減した実施方法を模索する必要があります。さらに本会のもう一つの重要な活動項目として、学術雑誌(JVMS)の発刊があります。これについては、IT関連技術が急速に発達する現代において、投稿論文における人工知能(AI)の利用規定が、非常に大きな問題になると思われます。
総会のご挨拶でも申し上げたとおり、私は究極的には学術集会開催とJVMS発刊の2つが、日本獣医学会における最重要の公益活動と考えます。この点に主眼をおいて、本会の体制やありかたを見直し、必要に応じて整備を進めてゆきたいと存じます。どうぞ会員およびご関係の皆様のご理解とご協力を賜りますよう、改めてお願い申し上げます。