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Q:野生生物に関する研究室等がない大学で学んでも、野生動物の治療や保護はできますか?

 こんにちは。
 将来獣医として、人間の活動によって傷ついた動物を治療、保護、リハビリをする形で野生生物の保護、保全に係わりたいと思っています。そこでこのページを見たのですが、大学によって野生生物について学べる、学べない、ということがあることを知りました。
 そこで、例えば野生生物に関する研究室等がない大学に進学し、犬や猫の小動物の怪我、病気の手術や治療について学び、その技術や知識を生かし、野生生物の治療等を行うことはできないのですか?
 よろしくお願いします。

お答え

 人間の活動などによって傷ついた野生動物を治療して、野生復帰させることを、傷病鳥獣救護といいます。獣医師やボランティアを対象に、救護に関する講習会が開催されています(野生動物救護獣医師協会(WRV)など)。あるいは、経験者と一緒に救護活動にたずさわりながら習得した方もいます。ですから、野生動物に関する研究室等がない大学に進学しても、傷病鳥獣の治療に関する知識や技術を身につけることはできます。

 ところで、傷病鳥獣救護の基本原則は生物多様性の保全です。説明を加えますと、治療や野生復帰が、生物多様性にとってよい選択とは限りません。例えば、野生動物では、生まれた仔の一部が成長の途中で死ぬことは珍しくありません。救護活動によって劣勢の個体が取り除かれないことは、むしろ、自然淘汰の妨げなのかもしれません。あるいは、人がいる空間で治療された個体が、野生の個体群に病原体や耐性菌を持ち込むことも考えられます。このように、救護に関わる獣医師は傷ついた個体を治療するだけではなく、個体群や生物多様性など幅広い視点を持つことが求められます。そのため、獣医学だけではなく、生態学や保全生物学に関する本も読んでおくことをお勧めします。

三谷奈保
日本大学 生物資源科学部 生物環境工学科
(2020. 5.18 掲載)

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