神奈川県内の低山に行った時に、猿の糞を踏んでしまいました。気がついた時、ウェットティッシュで目立つ所は取り除きましたが、細かい隙間に入り込んだ糞までは取れていない状態でシューズ袋に靴を入れました。糞には人間にも感染する様な感染症など様々な菌があると聞きました。 シューズ袋は、4年経った今でも使っていますが糞に含まれる感染症などの菌は、どのくらいの期間生息可能性なのでしょうか。私は妊娠7ヶ月で、妊娠中に行った血液検査で、肝炎やエイズの感染は見つかりませんでしたが心配になりご連絡しました。
猿が関わる主な人獣共通感染症としては,Bウイルス感染症,結核,細菌性赤痢,アメーバ赤痢などがあります。Bウイルス感染症は,サルに咬まれた際に唾液中のウイルスが傷口から入って感染します。この病気は米国のみで発生していて,日本を含むその他の国での発生は見られません。また,結核,細菌性赤痢は人が本来の自然宿主(病原巣)で,猿は被害者として捕獲された際や動物園などで人から感染します。結核は空気,細菌性赤痢とアメーバ赤痢は経口(糞便)で人に感染しますが,野外の日本猿の糞便中にこれらの病原菌が存在しているとは上記の理由から考えにくいと思います。糞便中には,大腸菌などたくさんの菌が存在しますが,それらの多くは正常細菌叢といって,健康な人や動物が普通に持っている菌です。すでに猿の糞を踏んで,4年を経過したということであればまず問題ないと思います。どうしても心配であれば,シューズ袋を新しいものに代えてはいかがでしょうか?
日本獣医学会理事 丸山総一 (2016. 3.30 掲載)