The Japanese Society of Veterinary Science
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Q:アロマオイルは犬猫に有害ですか?

 現在自宅で犬を飼っており、時には猫とも接するので、犬猫の健康に関する情報が目に留まります。
 その中で最近、「ペットには毒になるので、アロマオイルを使ってはいけない。特に猫は弱く、命に係わる」という言説をたびたび目にするようになりました。
 肝臓で解毒できない、という話をもとに調べてみたところ、書籍では見つかりませんでしたが、CiNiiから北海道大学の研究で、猫はグルクロン酸抱合能が低く、フェノール化合物の代謝能が低い、犬はアセチル化抱合能が欠けているという結果が出ていたことは知りました。しかし、アロマオイルに直接言及している部分までは見つけられませんでした。
 また有毒説を唱える言説では、フェノール系以外のアロマオイルも根拠を示さず全部危険だと言っている状態で、信頼していいものか悩ましいです。
 そして、昔も今もペット用品では、虫よけなど各種アロマオイルを使った品、中にはフードに添加しているものも販売されていますし、ペットへのハーブ治療やアロマテラピーをうたう本や施設も見かけます。しかしこちらも、化学物質や薬は危険だ、と極論を言っているものがあって、正直どっちもどっちに感じます。
 現時点で、犬猫にとってアロマオイルは毒になるのでしょうか、無害なのでしょうか。それとも、たとえば飼い主や畜体に虫よけのディート代わりにスプレーする程度の日常使用なら、どっちでもない無用のものなのでしょうか。

お答え

 身体に入ってくる薬物や毒物の種類にもよりますが、多くの場合、人、犬、猫で代謝速度が異なります。
 アロマオイルは天然香料、エッセンシャルオイル、化学的に合成された香料をフェノール、アルコールや植物油などで希釈したものを指すことが多いですね。香料の種類は極めて数が多く、そのすべての物質について犬や猫の体内での代謝が分かっているわけではありません。また溶剤となっているフェノールは哺乳類にとって急性毒性がありますし、アルコール類は人や犬に比べて猫では代謝されにくいことが分かっています。
 その他、犬や猫にはヤコブソン器官(鋤鼻器)という器官があって、人の何倍も鋭敏に匂いをかぎ分けることができます。従いまして、人と犬や猫では匂いを感じる強さが違いますので、人が良い匂いと感じても、犬や猫が良い匂いと感じるかどうかは甚だ疑問です。 また、人に匂いの好みがあるように、犬や猫にも好みがあってもおかしくありませんが、それを知るのは現時点で不可能と言って良いでしょう。
 結論としまして、「現時点では、すべてのアロマオイルに毒性がある。」という断定はできていません。しかしながら、少なくとも犬猫に安全性が確認されているものを使用された方が安心です。無理に証明されていないものを使って犬や猫に中毒を起こさないように気をつけて下さいね。

日本大学獣医生化学研究室 研究員
難波 信一
(2018/9/25 掲載)

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