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Q:てんかんと血中マグネシウム濃度の関係
 血中あるいは赤血球内マグネシウム濃度とてんかん発作に関する論文を見かけました。マグネシウム値とてんかんには負の相関が認められ,低マグネシウム血症はてんかん発作と関連があるとの論旨でした。臨床的に低マグネシウム血症とてんかん発作の関連はあるのでしょうか?関連があれば,てんかんの犬における低マグネシウム血症の占める割合はどのくらいなのでしょうか?

お答え

 反応性てんかん発作を起こす主な原因には,低血糖,肝性脳症,尿毒症性脳症,電解質不均衡などがあります。このうち電解質不均衡には,高または低ナトリウム血症,高または低カルシウム血症などが主な原因とされています。低マグネシウムもてんかん発作を起こす原因の一つとして挙げられます。マグネシウムは,細胞膜を安定化する効果や神経の脱分極や活動電位のバーストを引き起こすNーメチルD-アスパラギン酸グルタミン受容体と影響し合っており,さらに電位開口型カルシウムチャンネルの拮抗物質として脱分極を妨害している。よって低マグネシウム血症によって細胞膜電位の異常を起こして発作を起こすと考えられます。発作の原因となる低カルシウムが低マグネシウム血症によって二次的に発生する事も知られています。犬の血液マグネシウム値に関する詳細な報告はありませんが,ヒトでは通常血中1mEq以下の重度な低マグネシウム血症になると発作を起こす可能性があるとされています。
 犬のてんかん発作の原因に関するある研究では,11%が代謝または中毒であり,そのうち10%は電解質不均衡が原因であったと報告されています。しかし,その中には低マグネシウム血症の症例はみられていません。よって,成書などにはてんかん発作の原因としてあげられていますが,犬のてんかん発作の原因として低マグネシウム血症の割合は非常に少ないと考えられます。

日本大学生物資源科学部 獣医学科獣医神経病学研究室
北川 勝人
(2016/7/8 掲載)

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