■お答え
すべての動物で毎年のワクチン接種が必要というわけではありません。
ワクチンには,全部の動物に接種すべきコアワクチンと,感染のリスクに応じて接種するノンコアワクチンの2種類があります。
コアワクチンが対象とする病気には,犬では犬ジステンパー,犬パルボウイルス感染症,犬伝染性肝炎と狂犬病があり,猫では猫汎白血球減少症(猫のパルボウイルス感染症),猫ウイルス性鼻気管炎,猫カリシウイルス感染症があります。
主なノンコアワクチンの対象には,犬ではレプトスピラ病,パラインフルエンザウイルス感染症など,猫では猫白血病ウイルス感染症,猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ),クラミドフィラ・フェリス感染症などがあります。
接種方法については議論もありますが,世界小動物獣医師会のワクチネーションガイドラインの推奨する以下のような方法が現在最も安全で効果的だと考えられます。
- 犬のコアワクチン
子犬では6週齢から8週齢で接種を開始し,2から4週間間隔で16週齢以降まで接種します。6カ月または1年後に再接種(これをブースターと言います)した後は3年以上の間隔で追加接種を行います。(狂犬病はコアワクチンですが日本の法律で毎年の追加接種が義務付けられています)
- 猫のコアワクチン
猫汎白血球減少症は犬のコアワクチンと全く同じです。
猫ウイルス性鼻気管炎と猫カリシウイルス感染症はブースターまでは同じですが,室内で1頭飼いされているなど感染症の危険の少ない低リスク群の猫ではその後は3年に1回の接種が,また,多頭飼育で室内と屋外を行き来するような高リスク群の猫では毎年の接種が推奨されています。
- 犬のノンコアワクチン
レプトスピラ病やパラインフルエンザウイルス感染症では,ブースターの後も毎年の接種を推奨しています。
- 猫のノンコアワクチン
猫免疫不全ウイルス感染症とクラミドフィラ・フェリス感染症ではブースターの後も毎年の接種を推奨しています。猫白血病ウイルス感染症では,ブースターの後は2から3年以上の間隔での追加が必要とされています。
このように少し複雑なプログラムを組み合わせ,それぞれの動物のリスクに合わせてワクチンの接種間隔が決められるのです。ですから追加接種が3年に1回の動物も,逆に毎年必要な動物もいます。
ご質問にもあるワクチンの副作用については獣医師の間で重大な関心が持たれています。9年前の日本小動物獣医師会の調査では,犬にワクチンを接種すると約200頭に1頭で何らかの副作用が見られており,約3万頭に1頭が死亡しています。これはかなり高い数字だと言えます。こういった副作用をできるだけ減らすため,その動物に必要な最小限の回数でワクチンを接種する必要があるのです。
現在では臨床医の間でもこのような認識が広まり,地域のリスクに応じたプログラムを提案する動物病院もでてきています。
栗田動物病院
院長 栗田吾郎
(2016/5/27 掲載) |