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Q:除草剤の犬への影響(中毒)について
インターネットで除草剤の犬への影響(中毒)を調べたところ,有機ヒ素系農薬が危険である,とのサイトが多く出て参りました。現在,有機ヒ素農薬は使用されていませんが,この農薬による中毒症例が実際にあるのでしょうか。

お答え

犬の除草剤中毒では,一般的に「有機ヒ素系農薬」が犬の中毒を起こすとして記載されていることが多いのですが,ご質問内でのご指摘の通り,この薬剤は,現在,国内では使用されておりません。
国内における犬の中毒については,中毒学会から発行されている「中毒研究」で,2003年~2012年の10年間の調査データがまとめられています(竹内ら,中毒研究 27巻4号,364-369ページ(2014年))。
この報告によれば,調査で動物病院から回答の得られた1,623例のうち,農薬による中毒は104例あり(一般家庭で使用される殺虫剤や防虫剤などの農薬を除きます),その中で除草剤が原因となる中毒事例は14例でした。原因物質として,以下の内訳が報告されています。

1. グリホサート 7例
2. パラコート 2例
3. その他 5例

なお,犬で中毒を起こしている農薬としては,除草剤はメインの薬剤ではありません。犬で中毒の原因となる農薬は104例中殺虫剤が62例と,最も多いことが報告されています。保冷剤やたばこなど家庭用品を原因とする中毒788例の中でも,やはり殺虫剤が223例と,最も多く事例を占めています。

北海道大学 大学院獣医学研究科 毒性学教室
石塚真由美
(2016/5/12 掲載)

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