The Japanese Society of Veterinary Science
 
Q&A > 獣医大学・免許について

Q:牛の勉強がしたい

 私は今中学三年生ですが,高校は進学校を目指し,国立の獣医学科のある大学に行きたいと思っています。
 大学では,できるだけ牛に関わる研究や勉強ができる大学に行きたいと思っていますが,そのような国立大学がありますか?また大学以外でも,牛の研究をしている機関はありますか?牛といっても肉牛の方に興味を持っています。
 どこの獣医系大学でも同じような勉強しかしないという事を聞いたのですが本当ですか?今は,宮崎大学を第一希望に考えています。 また,目指す高校にイギリスのオックスブリッジ海外研修があるのですが,オックスフォードで牛の事を詳しく学べる場所はありますか?イギリス以外でも,特に牛のことを研究している国や地域があれば教えていただけますか。色々アドバイスをもらえたら嬉しいです。牛やそれ以外の大動物を扱う獣医師になりたいので,ぜひ宜しくお願いします。 

お答え

 ご質問ありがとうございます。また牛を扱う獣医師に興味を持っていただき感謝いたします。ご質問に順にお答えいたします。
 獣医学科(または学部)のある国公立大学は,北海道大学,帯広畜産大学,岩手大学,東京大学,東京農工大学,岐阜大学,大阪府立大学,鳥取大学,山口大学,宮崎大学,鹿児島大学の11大学あります。獣医系の私立大学は5大学(酪農学園大学,北里大学,日本獣医生命科学大学,麻布大学,日本大学)あり,日本には合計16の獣医学系大学があります。
 まず,獣医学を勉強する上で,動物別に分類してみますと,実験動物(マウス,ラットなど),伴侶動物(犬,猫など),産業動物(牛,豚,鶏など),その他(野生動物,海獣,動物園動物など)の四つに分けられます。
 研究する内容は,大きく3つに分けることができます。一つ目は,動物の体の構造や機能,病気の基礎を学ぶ分野です(基礎系)。二つ目は病気の原因となる細菌やウイルスがどのように動物に感染するのか,それを動物はどのように防いでいるのか,あるいは人と動物に共通の病気などについて学ぶ分野です(応用系)。三つ目は,動物の病気を治療したり予防をする分野です(臨床系)。
 「牛に関わる研究や勉強」は,基礎系でも応用系でも臨床系でもできます。ただし牛への関わり方が違います。基礎系の牛の獣医師は,農場にはほとんど行きませんが,牛の細胞や臓器を扱います。応用系の牛の研究者は,採材などで時々農場には行きますが,主に牛から取れた細菌やウイルス,血液などを扱います。臨床系の牛の獣医師は,毎日のように農場に行き牛の病気の治療や予防に当たります。
 牛の臨床への注力の程度も,大学が所在する地域の畜産事情により異なります。北海道は酪農が盛んなので,帯広畜産大学は乳牛,東北や九州は肉牛(和牛)の生産が盛んな地域なので,岩手大学,宮崎大学,鹿児島大学は肉牛(和牛)に関する実習や研究が盛んです。これらの大学は入院設備や実習設備が整っており,大学周辺の農家に診療に出かけて牛の治療などを積極的に行っています。
どの獣医系大学に行っても6年間勉強して,卒業時に獣医師国家試験を受けて合格しないと獣医師になれません。したがって,各大学も国家試験を視野に入れた講義や実習が行われています。現在は,全国の獣医系大学で話し合って共通のカリキュラムを作っており,各大学の授業や実習の70%はこのカリキュラムに基づいて組まれています。どの大学を卒業しても,同じレベルの獣医師を社会に送り出すための仕組みです。ただ,大学によって特長あるカリキュラムが組まれていたり,教える先生によって講義内容は微妙に異なることはあります。牛に関する実習設備,牛を実習で扱う頻度も大学によって異なります。
 国(独立行政法人)の試験研究機関としては動物衛生研究所,畜産草地研究所,家畜改良センターなどがあります。都道府県にもそれぞれ畜産試験場があります。国や都道府県で働いている獣医師は公務員です。民間にも,家畜改良事業団,全農飼料畜産中央研究所,JA全農受精卵移植研究所などがありますので,各ホームパージを参照してください。
 また,各都道府県に農業共済組合(NOSAI)という組織があります。各NOSAIには家畜診療所があり,多くの産業動物獣医師が働いています。この獣医師の業務は家畜の保険制度の運営や牛の診療ですが,診療しながら,現場に即した研究テーマを見つけ,研究や試験をする獣医師も多くいます。研究成果を学会で発表したり論文を書いたり,中には働きながら大学院に入り学位(博士号)を取る獣医師もいます。私もその一人です。ですので,研究機関に所属して牛の研究をする道も,臨床獣医師として働きながら牛の研究をする道もあります。
オックスフォードで牛の事を詳しく学べる場所については,ご自分でお調べください。イギリス以外でも,酪農や肉牛生産が盛んな国や地域では牛の研究も盛んです。アメリカ,カナダ,ヨーロッパ(ドイツ,オランダ,フランスなど),オーストラリア,ニュージーランドなどです。ただ,海外の獣医系大学を卒業し,その国の獣医師免許を取得しても,日本の獣医師免許を取得するには,改めて日本の獣医師国家試験に合格する必要があるので,ご注意ください。
ぜひご自分でも色々な情報を得て,夢に向かって頑張ってください。。

日本大学生物資源科学部獣医学科
獣医産業動物臨床研究室
教授 堀北哲也
(2016. 9. 21 掲載)

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