The Japanese Society of Veterinary Science
 
Q&A > 獣医大学・獣医師免許について

Q: 北米獣医師試験を受験するには

私は現在、獣医系大学の4年に在籍しており日本の免許を取得後、北米獣医師試験を受験予定です。
そこで質問なのですが、仮に英語の試験、BCSE(筆記試験)をパスしたとしてCPE(臨床試験)の準備および練習はどのような形でするのがベストでしょうか?以前の質問の回答でいくつかの大学が実習プログラムを提供しているとあったのですが、具体的にどの大学(北米やオーストラリアで)が提供しているのでしょうか?
また北米獣医師試験に関連し、この免許はオーストラリアなどの他のイギリス連邦加盟国でも有効なのでしょうか?
この件に関しての情報が少なく混乱しております。最新の情報が知りたいのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

お答え

日本では獣医師免許の認可・規制機関は農林水産省ですが、アメリカではAmerican Veterinary Medical Association (AVMA、米国獣医師会)、さらには各州の獣医師会がその役目を担っています。AVMAに認可されている獣医大学を卒業したものはNorth American Veterinary Licensing Examination (NAVLE北米獣医師免許試験)に合格し、さらに実際に働く州の獣医師免許試験に合格することによって獣医師として働くことができるようになります。AVMAに認可されている獣医大学は現在アメリカに28校、カナダに5校、オーストラリアに4校、英国に3校、アイルランドに1校、フランスに1校、ニュージーランドに1校、オランダに1校、メキシコに1校、西インド諸島に2校の計47獣医大学です。カナダでの獣医師免許の認可・規制機関はCanadian Veterinary Medical Association (CVMAカナダ獣医師会)で、CVMAに認可されている獣医大学はAVMAに認可されている獣医大学とほぼ重複しています。

日本の獣医大学はAVMAやCVMAに認可されていませんので、日本の獣医大学を卒業したものが北米で獣医師免許を取得する場合にはEducation Commission for Foreign Veterinary GraduatesいわゆるECFVGから資格認定証を受け取る必要があります。その為にはステップ1として自分が獣医大学を卒業したことを証明する書類を提出し、ECFVGに登録する、ステップ2として英語試験(TOEFL)に合格する、ステップ3としてBasic and Clinical Sciences Exam(BCSE)に合格し、そして最後に(ステップ4)Clinical Proficiency Exam(CPE)に合格する必要があります。これら4つの全てのステップを終了すれば、ECFVGの資格認定証が得られ、AVMA認可大学を卒業したもの達と同様に北米のあらゆる州で獣医師免許を取得できる有資格者となります。ECFVGはカナダの他にオーストラリアとニュージーランドでも認められていますので、ECFVGにパスすればアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの計4カ国で獣医師免許が取得可能になります。カナダ在住であればAVMAによるEDFVGではなくCVMAによるNational Examining Board (NEB)に登録しますが、ステップ2からステップ4までの過程はECFVGプログラムと同様です。ステップ3および4の試験を受ける場所がECFVGではアメリカ、NEBではカナダになります。ステップ3のBCSEに合格した時点でNAVLEの受験ができるようになります。NAVLEはECFVGプログラムには含まれませんが、アメリカ、カナダで獣医師として働く為には、これらに合格していなければその国の州の免許が取得できません。CPEは臨床技量を試験するものですが、イヌの避妊手術、麻酔管理、ウマの跛行診断、動物の剖検などが含まれ、日本の獣医大学を卒業しただけの臨床経験だけでは合格するのは困難です。北米の獣医大学で聴講生や大学院生をしながら独学でECFVGプログラムに挑戦している外国出身獣医師を見かけることもありますが、CPEの準備に最適なのは北米の獣医大学の4年生と同様の臨床実習を実際に北米の獣医大学で受けることではないかと思います。少数の大学(アイオワ州立大学、オクラホマ州立大学、カンザス州立大学、ルイジアナ州立大学、オレゴン州立大学)にステップ3まで終了したものを主な対象者に獣医大学の4年生に混じって臨床実習を受けるプログラムが存在するようです。ビザは発給してもらえるか、授業料はいくらかかるのかなどは実際にそれぞれの大学に問い合わせてください。このような臨床トレーニングはTraining program for PAVE/ECFVG candidatesと呼ばれることがあります。PAVEとはProgram for Assessment of Veterinary Education Equivalence のことでAVMA非認可獣医大学を卒業したものがアメリカで獣医師として働けるようになるためのもう一つの方法です。ECFVGプログラムはAVMAによるものですが、PAVEはAmerican Association of Veterinary State Boards (AAVSB)によって運営されています。ECFVGのステップ3、BCSEに相当するものがPAVEではQualifying Examination(QE)です。これに合格すれば、後はアメリカの獣医大の4年生と一緒に受ける1年間の臨床実習にパスできれば(ECFGVのステップ4であるCPEに相当)PAVEの資格認定書が得られます。これによりアメリカの全州ではありませんが、40の州とオーストラリアそしてニュージーランドで獣医師免許が取得可能になります。PAVEはカナダでは認められていません。ECFGVを選ぶかPAVEを選ぶかは、将来自分がどの国・州で働きたいか、そしてそれぞれの臨床技量や経済力によって左右されるのではないでしょうか。現在ECFVGは登録料が千ドル、PAVEの登録料は375ドル、CPEの受験費用は約六千ドルですが、Training program for PAVE/ECFVG candidatesはそれぞれの獣医大学の州外出身学生の1年間の授業料と同等の授業料がかかるのでそれだけで3万ドルほど必要になるはずです。

イギリスの獣医師免許の認可・規制機関はRoyal College of Veterinary Surgeons (RCVS)です。RCVSを取得することがイギリスでの獣医師免許取得になりますが、その有資格者はイギリス、EU、オーストラリア、ニュージーランドの獣医大学卒業者、そしてAVMA認可大学卒業者です。ECFVGやPAVEはRCVSに認められていません。日本の大学を卒業した獣医師がイギリスで獣医師として働くためにはRoyal College of Veterinary Surgeons Membership Examinationを受験し合格しなくてはなりません。

この様に獣医師免許取得資格の条件は国によって様々です。自分が将来獣医師として働きたい国が日本以外にあるようでしたら、その国の獣医師免許の認可・規制機関にまず問い合わせてみて下さい。それぞれの機関のウェブサイトからも情報は入手することができます。北米では度々ECFVGやPAVEの取り決めに変更がありますので、実際に外国の獣医師免許を取得しようとする際には、必ず最新情報を直接それぞれの国の獣医免許認可・規制機関から得るようにしてください。

黒木圭一 DVM, PhD, DACVP
ミズーリ大学獣医学部准教授

(2014. 7.10 掲載)

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