The Japanese Society of Veterinary Science
Q&A > 獣医師の仕事について

Q:薬剤師に期待する獣医療業務

薬剤師としての動物への関わり方について質問いたします。
大学にて薬学を学んでいるものですが、将来薬剤師としてヒトではなく動物の薬物治療に携わりたいと考えています。しかし、現状獣医師が動物治療のすべて担っていることも理解しています。そこで、薬剤師の職能を動物たちで発揮するためにはどのような職があり、また新しく職を作り上げるのであれば獣医師としてどのようなことをして欲しいかご教示していただけると幸いです。

お答え
 獣医師と薬剤師との関わり合いについて、現状では一部の獣医科大学が付属動物病院内の薬局で薬剤師を雇用しているに過ぎないと思われます。しかし、獣医師が本来すべき多くのことを考えると、獣医師が動物看護師による補助のもと薬剤の管理および調剤をすべて担うことは、非効率であるとともに獣医療上の事故につながる可能性があります。したがいまして、動物病院の業務において、薬剤の専門家である薬剤師に期待することは多く、その一例をあげると下記の通りになります。

1)動物種の特性あるいは個体による嗜好を考慮した調剤と調剤法の工夫
 飼い主が動物病院で処方された薬剤を家庭で動物の口を開けて、強制的に経口投与することはふつう難しいことです。犬によっては、喜んで薬を飲み込む性格のものがいますが、多くの場合、飼い主が少量のエサと一緒に薬を与えています。したがいまして、獣医師が薬を処方する際には動物種の特性あるいは個体の嗜好に応じて、薬剤と剤型を選択する必要があります。そして、適切な調剤を行った上で、薬剤の投与方法を飼い主に指導できれば、薬物治療のコンプラインアンスが上がり、治療効果の改善が促されると考えられます。

2)薬剤治療の専門家の不在と必要性
 獣医学教育において、一通りの薬理学は学びます。しかし、獣医師が診療対象とする動物は家畜(イヌ、ネコを含む)を始めとして、いわゆるエキゾチックアニマル(鳥、フェレット、爬虫類など)まで、多種多様です。このような状況において、一人の獣医師が動物種に応じた薬剤の選択と調剤を行う事には無理があります。そのことから、それぞれの動物種における特異的代謝および副作用を考慮した薬物治療について、獣医師が相談できる専門家が必要とされています。

3)有害事象や薬剤相互作用などに関する情報提供
 一人の獣医師が動物病院で取り扱う薬剤は、全身の疾患を対象とする診療が故に多種多様です。そして、薬剤に関する効能と有害事象や薬剤相互作用についての情報は日々アップデートされています。さらに、後発薬を含め、新しい薬剤も次々と発売されています。このような状況下で獣医師が薬剤に対する重要情報を適切に取り入れる必要がありますが、時には見過ごしてしまうことも十分に考えられます。このことから、獣医師が処方した薬剤に対して、直接的あるいは遠隔的に相談できる専門家がいれば、より治療効果が高く、安全な治療が実現されると考えられます。

4)薬剤耐性菌対策
 獣医師による抗生剤の安易な使用は、環境中で薬剤耐性菌をいたずらに生じさせる原因となっています。そのことから、治療目的による抗生剤の選択、投与量および投薬期間について、適切に助言できる専門家が必要とされています。

5)院外処方箋薬局の設置
 法的規制があるかとは思いますが、将来的には動物用医薬品も含めて取り扱うことができる処方箋薬局が設置されれば、非常に便利であると思われます。


(日本大学 中山智宏)
(2018.5.8 掲載)

日本獣医学会事務局
office@jsvs.or.jp | Tel: 03-5803-7761 | Fax: 03-5803-7762
〒113-0033 東京都文京区本郷6-26-12 東京RSビル7階

Topページに戻る