日本獣医学会Q&Aコーナーへのご質問ありがとうございます。
獣医系の大学では,獣医師を育成するための教育として必ず獣医解剖学実習,実験動物学実習,外科学実習等の直接動物を扱う科目を受講しなければならず,動物の死と直面することがあります。これらの実習に使用される動物は獣医学の修得のため,またより良い獣医師を育成するために,必要な数だけを制限して使用しています。
獣医師免許を取得して臨床現場に立った場合でも,どうしても救えない病気や苦痛に苦しむ動物に直面したときには,安楽死を行ったり,口蹄疫や鳥インフルエンザなどの伝染病の蔓延を防ぐ目的で多くの牛・豚・鶏などを安楽殺することもあります。これらの仕事にたずさわった獣医師も動物の生命を絶つときにはとても心を痛め,辛い思いをしています。しかし,動物の苦痛軽減,私たちの健康や食の安全・安心を守ためにやむを得ず動物の命を絶っていることをご理解ください。多くの獣医師は,貴方と同様に動物が大好きですが,仕事の内容から動物の死を避けては通れません。
獣医系大学の受験を目指していらっしゃるとのことですが,単に動物が好きであるとかかわいいといった気持ちを優先するのではなく,獣医師は動物の生命を扱う責任の重い職業であることをご理解いただいた上で受験することをお勧めします。
日本獣医学会広報担当理事 丸山総一