質問にお答えいたします。
Q1 実験動物に関わる仕事とは、どのような仕事内容なのでしょうか。
A1 まず、実験動物には、ネズミ(マウス・ラット)、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、サルやミニブタなど非常に広範な動物種が含まれています。これら実験動物に関わる獣医師の仕事は大きく2つに分けることが出来ると思います。1つは実験動物の繁殖・維持とともに疾病の予防・診断・治療を行う管理主体の獣医師です。他の1つは、ヒトあるいは動物用医薬品の開発のため、各種実験動物を用いて、有効性、安全性あるいは代謝研究に従事する獣医師です。これら獣医師の多くは、国立研究機関、製薬企業研究所、受託研究機関あるいは医科系大学に属しています。共通することは動物愛護・福祉に対する高い意識とともに、取り扱い(ハンドリングとも言います)に高度な技術を有していることです。最近では、認定実験動物医専門医制度が設けられ、卒後教育・訓練の充実が図られています。
Q2 獣医師が、動物などの薬を開発するような仕事に就くことは可能なのでしょうか。
A2 製薬企業の研究所では多くの獣医師が、前述したような管理あるいは研究業務に携わっています。後者の例として、安全性研究に従事する獣医師について紹介しますと、適正な使用動物の選別に始まり、薬物投与、採血、症状観察、臨床検査、眼底検査、心電図検査、画像解析、各種手術そして病理診断と臨床獣医師に求められると同様の技量を駆使して研究に従事しています。研究を重ね、学位(博士号)を取得し、企業研究者としてグローバルに活躍している獣医師もいます。一方では、各種細胞を用いて分子生物学的アプローチを得意とする獣医師もいますし、再生医療の基礎研究に従事している獣医師もいます。このように、獣医師はヒト以外の全ての生物(動物)を扱えるプロフェッショナル(専門家)として、創薬研究においても大変重要な役割を担っています。
Q3 実験動物や動物用の薬などに力を入れている大学はありますか。
A3 我国には16の獣医科大学がありますが、大学間で6年間の実験動物学・薬理学教育には大きな差はありせん。しかし、大学院に進学すれば、より高度な実験動物・創薬に関する教育を受けることが可能です。なお、獣医師免許を取得後、実験動物に関わる仕事を希望すれば、(職種に拘らなければ)現状それ程難しくはないと思っております。
古濱 和久(岩手大学獣医学課程 基礎獣医学分野)