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Q:牛海綿状脳症の原因であるBSEプリオンの残存について |
BSEの原因とされる異常プリオン自体の寿命はお分かりになりますでしょうか? |
■お答え 牛海綿状脳症の原因であるBSEプリオンは、一般的な環境下に5年間放置しても残存し(文献1)、熱などの物理化学的処理に対しても著しい抵抗性を示します。蒸気による加熱処理では、BSEプリオンの感染性は摂氏155度の20分間で消失します。しかし、BSEプリオンを含む組織を乾燥させると、その感染性は摂氏170度の20分間でも若干残ります(http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2013/niah13_s16.html)。組織の焼却処理を模した試験では、BSEプリオンは摂氏600度20分間の焼却処理で消失します(文献2)。BSEプリオンは蛋白質のみで感染する病原体であるため、飛び散った組織などに対しては高濃度の水酸化ナトリウム溶液や次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度2%以上)などの薬品に2時間以上浸漬するなど、蛋白質を完全に分解する方法がBSEプリオン除去に有効だと考えられます。 2009年以降全国で約200万頭のBSE検査で、感染陽性牛は1頭も摘発されていません (https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/bse/b_sarvei/index.html)。2013年に国際獣疫事務局から「無視できるBSEリスク」の国に認定されています。国内でBSEが摘発された2001年以来、BSE陽性牛が摘発されると、牛の血液や組織片が飛び散る可能性の高い施設などでは施設内を全て水酸化ナトリウム溶液や次亜塩素酸ナトリウム溶液などで消毒しています。また、BSE陽性牛に加え、全月例の扁桃・回腸遠位部、30か月齢超の頭部(舌・頬肉・皮は食用可)・脊髄・脊柱を含む特定の組織は全て廃棄され、食品へのBSEプリオンの混入を防いでいます。これらBSE対策は牛海綿状脳症対策特別措置法(平成14年法律第70号)で定められ、現在でも続いています。
松浦裕一(農研機構動物衛生研究部門) |
連絡先 日本獣医学会事務局 |
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