■お答え
ご質問ありがとうございます。
愛猫のグルーミング(ブラッシング)の必要性やその方法についての質問ですね。大切なパートナー,あるいは家族の一員として猫のグルーミング(ブラッシング)の意味やその必要性を考えることがまず重要です。
まず,一般的に,グルーミングとは,動物が体の衛生や機能維持などを目的として行う行動を,また,ブラッシングとは、ブラシ等で髪の毛や動物の毛をすくことを言います。最近は,人が行うブラッシング,動物の爪切りや耳掃除など身づくろいを含めてグルーミングとも言うようです。
<猫のグルーミングの意味>
猫のグルーミングには ① 皮膚や被毛の健康を保つ。
② 暑さの調節 *自分の被毛を濡らし,気化熱を発生させて体温を下げる。
③ ストレスや嫌な匂いがついたときに行う *不安やストレスを感じた時の忌避反応としてグルーミングを行ったり,自分の匂いとは違った嫌な匂いが体に付着した際に行ったりする。
④ コミュニケーションの方法 *猫同士がお互いのコミュニケーションを図る際に行う。基本的には親子,兄弟同士で見られることが多いが,幼い頃から同居している猫同士にも認められる。
などの意味があると考えられています。
これらの意味を考えると,飼主が飼猫に対してグルーミングが必要かどうかは予想できますね。そうです,猫の皮膚の状態や被毛の状態を診てあげるためにも定期的なグルーミングは必要ですし,愛猫との信頼関係を築いていくうえでもグルーミングは重要だと思います。特に猫が自分では舐められない首周りやあごの下などは,飼主が触るだけでも喜ぶことが多いです(もちろん警戒心が強くて寄せ付けない猫もいますが)。また飼主がグルーミングを行うことによって,ノミやダニなどの寄生虫や皮膚の病気を見つける機会が増えます。
飼主が飼猫に対してグルーミングを行う重要な理由がもう一つあります。それは無駄な被毛を取り除くことです。基本的に猫にも換毛期が春と秋(3月と11月あたり)にみられます。この換毛期に飼主がグルーミングをして無駄な被毛を取り除かないと,猫自身が毛づくろいをして大量の被毛を飲み込むことになります。その結果,胃の中で毛玉が形成され,毛玉を吐いたり,最悪の場合は吐き出せずに消化管内に毛球が滞ってしまう毛球症にかかったりします。
<頻度と方法> ではどれくらいの頻度で,どういう方法で行うかは目的によって変わってきます。上述したように換毛期には毎日のようにブラッシングをしても大量の毛がとれる猫もいます。こうした猫には毎日しっかりとグルーミングしてあげることが毛球症の予防にもつながります。また完全室内飼いの猫だと太陽光による季節の変化がわからなくなり,換毛期自体がなくなることによって一年中抜け毛が止まらない場合もあります。したがって毛球症を予防することを目的とした場合は, 猫の脱毛の量に合わせてグルーミング(ブラッシング)の頻度を決めていただくのがよいと思います。
コミュニケーションを構築することを目的とした場合には,毎日,軽めのグルーミングをするべきだと思います。 ただし,いずれの目的であっても猫の気分が乗らない場合は,強引に行わず,グルーミング自体が嫌いにならないように心掛けることが重要です。一度,嫌いになってしまうとブラシを見ただけで逃げだすようになることもありますので気を付けてください。
基本的なやり方として
① 3分程度の短い時間で実施
② 比較的嫌がらないあごの下,頭の後ろや首周りから
③ じっとしているようであれば背中,腰,しっぽのあたり
④ リラックスしているようであればお腹の毛も
この際,猫が痛みを感じない程度の力で行う。アンダーコート,オーバーコート関係なく脱毛している被毛を取り除くことが重要で,力任せに被毛を取り除かない。
<グルーミングの道具> ・ スリッカー: 抜け毛,もつれ毛を効果的に取り除く
・ ピンブラシ: 先が鈍になっているので皮膚や被毛を傷つけない
・ ラバーブラシ: 浮いた毛を絡めとる。短毛種向き
・ 獣毛ブラシ: 毛艶をよくする。短毛種向き
・ コーム: ブラッシング後の仕上げに毛並みを揃える
<猫のシャンプー>
グルーミングをしっかりとしていれば基本的には必要ないかもしれません。しかし飼主が飼猫の汚れ,フケ,毛艶や臭いが気になるのであればその時にシャンプーをしてください。 ただし犬と違って猫は被毛や皮膚が水に濡れるのを嫌う傾向にありますので,ストレスを感じない程度の頻度で行ってください。
以上,まとめると猫に対するグルーミングはスキンシップの方法だけではなく,毛球症の予防,ノミなどの寄生虫や皮膚・体の異常に気付いてあげるためにも重要です。
ただし,猫の気持ちも考えながら行わないとコミュニケーションを図ることができませんので,個体毎の性格に合わせた時間や方法で行ってください。
日本大学獣医学科
専任講師 伊藤 大介
(2015/10/29 掲載) |