まず、動物用医薬品のことについて簡単に説明します。日本で売られている動物用医薬品の数は約3,000にもなります。牛や豚などの産業用動物用のものから伴侶動物用のものまで様々です。その中には、動物だけに使われる特殊な薬もありますが、多くの薬は人で使われる薬とほとんど同じ成分のもので、特に犬や猫で使われる薬のかなりの部分は、人用に開発された薬そのものを転用しています。動物用医薬品の開発を行っている会社は非常に多く、製薬メーカーの約半数は規模はともあれ何らかの形で手がけています。動物薬だけを専門にしている会社もあります。そこに働く研究者や開発担当の人たちのかなりの部分は獣医師です。一方、獣医師は動物に関する幅広い知識を持っているため、製薬企業の研究所の様々な分野で活躍しています。人用の薬のマーケット規模は動物用に比べて数十倍にもなるため、製薬企業で働く獣医師のなかで人用の薬の開発に携わる人の方が圧倒的に多いことを知っておいてください。したがって、動物用の薬の部署を希望して製薬企業を受験しても、総合製薬メーカーの場合は必ずしもそこに配属されるとは限りません。
動物用医薬品に関する研究職につきたいという○○君の場合、獣医学を学ぶのが最も近道だと思いますが、薬学部や他の生物系学部出身の人もいますので、そのような選択肢もあるかと思います。
東京大学 尾崎 博