■お答え
ご質問ありがとうございます。歯科医師の方が,獣医歯科に興味を持っていただき,大変うれしく存じます。
残念ながら,現在,日本の獣医学教育の中で獣医歯科に関しては十分な教育体制ができているとはいえません。一般的に,犬や猫を対象とする小動物臨床医は,大学を卒業して約7~10年間,動物病院や大学病院などで研修医や勤務医として臨床経験を積んでから開業しています。研修した動物病院が獣医歯科に力を入れている場合は,さまざまな口腔・歯科疾患の診断・治療などの経験を積むことが可能ですが,そうでない場合は十分な経験を積むことは困難です。したがって,歯科医師から観た場合,動物病院での歯科治療は,人と比較して知識や技術が十分でないと感じられるかもしれません。
現在,獣医師免許は農林水産省,歯科医師免許は厚生労働省の管轄ですので,獣医師が人の歯科治療を行えないのと同様に,歯科医師が動物の歯科診療を行うことはできません。実際に犬や猫の歯科医療を行う際には獣医師免許が必要となります。
人と犬・猫では,口腔や歯の解剖,役割,機能,生理などの観点から異なることも多々あり,さらに口腔内疾患や細菌叢なども異なることが少なくありません。したがって,獣医歯科学を学ぶ必要があります。
歯科医師の資格を持って獣医学科に入学し,その後獣医師の資格を取得された方も私の知る限りでも数人いらっしゃいます。歯科医師が,獣医師に人の歯学の情報を提供し,間接的に動物の歯科の診断や治療に貢献していただく道もありますが,その機会は多くありません。
以上のことから,臨床面で犬や猫の口腔・歯科医療に携わるのであれば,大変かもしれませんが,獣医師になる必要があります。
日本小動物歯科研究会会長
フジタ動物病院 藤田桂一
(2017. 7. 3 掲載)
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