現在、犬や猫を対象とした小動物医療分野においても、障害を持つ動物または手術を受けた動物に対するリハビリテーションの重要性が高まっています。欧米においては、リハビリテーションは既にひとつの治療法として確立しつつあり、動物療法士の教育や認定システムも確立しています。それらの中でも、米国のテネシー大学におけるCertificate Program in Canine Rehabilitationと米国のCanine Rehabilitation Institute (CRI)における認定システムが世界的に有名で、獣医師、動物看護師、理学療法士が、これらの資格を得ることができます。近年では、これらの認定システムの一部が日本でも受講が可能となってきています。
しかし、わが国においては、獣医科大学でリハビリテーションおよび理学療法に関する教育はほとんど行われていないのが現状です。これは、動物のリハビリテーションが国家試験の科目外であることが大きな要因であると思われます。いくつかの大学においては、付属の動物病院でリハビリテーションが行われていますが、現在のカリキュラムでは授業や実習で多くの時間を割いて動物のリハビリテーションの教育を行うことは困難な状態です。このような背景から、「どの大学に進めばリハビリテーションを多く学べるか?」という質問に対しては、「どこの大学でもほとんど行われていない」と回答せざるを得ません。
それでは、日本でリハビリテーションが学べないかというと、そういう訳ではありません。現在、多くの学会において卒後教育としてリハビリテーションに関する講演や実習が行われているので、学生時代からそのような学会に積極的に参加するのも良い考えかと思われます。近年では、日本動物リハビリテーション学会が設立され、教育や学術交流が始まり、また、動物理学療法士の認定システムも構築されつつあります。このように、大学外においても動物のリハビリテーションを学ぶ機会はたくさんありますので、もし積極的に動物のリハビリテーションを勉強したいということであれば、これらの環境を利用することをお勧めします。
枝村一弥(日本大学)