ご質問ありがとうございます。獣医師の卵として,処分される犬・猫に心を痛めているあなたは,とても心優しい方なのだと思います。
誰でも保健所や動物保護センターなどに持ち込まれた犬や猫の命を安易に断つことについては反対で,現場で対応している獣医師もこの現実にはとても心を痛めています。
行政の努力もあって,平成23年度の犬・猫の殺処分数は174,742頭と平成16年度の殺処分数394,799頭に比べると,半分以下になっていますが,今だに多くの犬や猫が処分されているのが現実です。ただ,環境省のデータをみていただくと分かりますが,最近の犬・猫の返還・譲渡数は飛躍的に増えています。この数字には,飼い主の元に無事戻った動物も含まれていますが,行政やボランティア団体などの連携により,幼齢や他の飼い主にも飼うことのできる健常な個体が多く含まれています。
(環境省自然環境局 統計資料: 犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況)
ただ,残念なことに,老齢であったり,病気やひどい怪我,性格に問題ある個体(かみ癖など)など,どうしても譲渡に向かないと判断された動物は処分されています。処分頭数の多くは,こういった犬や猫を反映しています。
また,臓器移植に関しては,人間でも同様ですが免疫が深く関わっていますので,猫同士あるいは犬同士であっても安易に行うことは難しいと思います。ただ,一時的な輸血などは行われることがあります。また,ドナーとなる個体も健全であることが保証されていないと,移植することは難しいと思います。保護された犬・猫の過去の背景は分かりませんし,先ほど述べたように,処分される動物は老齢や病気のものが多いので,臓器移植には向かない個体がほとんどです。また,このような動物を用いて臓器移植を行っている動物病院はありません。
私も,一日も早く犬や猫の処分数がゼロになる日が来ることを祈っています。
日本獣医学会広報担当理事 丸山総一
(2014年1月20日 )