■お答え
馬の獣医師の現状:
第二次世界大戦以前,馬は農耕,軍用に使われる重要な家畜でしたが,現在ではほとんどが競馬や乗馬,輓馬競技(そり競技)用,あるいは食用として飼育されています。日本では年間約1,000人の獣医師が誕生しており,届出がされている獣医師は約39,000人ですが,その約500名(1.3%)が競走馬に関わる仕事をしているとされています。馬に関わる仕事をしている獣医師は,大きく臨床とそれ以外に分けられます。臨床に関わる獣医師は,けがや病気になった馬の治療をします。臨床以外の分野では,国家公務員として輸入馬の検疫,ワクチンの検定,地方公務員として馬の伝染病の検査や予防に関わる仕事をします。また,製薬会社やワクチン会社で,馬の薬やワクチンの開発,飼料会社で馬の飼料の開発,販売をすることもあります。大学で馬に関わる講義や実習をする教員もいますが,日本ではそれを専門にしている方はいません。
馬の再生医療:
馬の「再生医療」という分野が明確に定義されていませんのでお答えが難しいのですが,眼科(角膜),整形外科(骨折,関節炎,腱・靭帯炎),外科(創傷)の分野で試みがなされています。中でも,競走馬における幹細胞移植を用いた屈腱炎の治療に関する研究が一番進んでいると思いますが,臨床的に効果が認められる段階に達するまでには,今後さらなる研究が必要です。
JRA 獣医師 草野寛一
(2017. 9. 4 掲載)
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