The Japanese Society of Veterinary Science
 
学会案内
学術集会 学会誌 動物の病気 獣医学の教育 Members Area 学会賞 行政文書 賛助会員 Q&A リンク
Q&A > 動物の病気

Q:犬の発情期について

動物、特に犬のさかりについて質問いたします。

2歳のオスの雑種犬を飼っております。
昨秋のことですが、近所に発情したメスがいたようで、脱走を繰り返しました。
その時は静止も聞かず、私の目を盗んで脱出を図っている始末でした。
しかし、脱出先で捕獲時には呼べばおとなしく戻ってきました。

質問は、どんなに躾の出来た犬でも、発情したメスがいた場合にはご主人様のいうことも聞けなくなるほどになってしまうものなのでしょうか?それともそれでも我慢できるようにしつけることは可能なのでしょうか。

さかりのついた期間は遠吠え、震え、食欲不振と典型的な症状が出ておりました。
ストレスもかなりのようで、それを沈める対策などはありうるのでしょうか。それとも去勢しか方法はないのでしょうか。

去勢をする場合,個体差があり効果は100%ではないと聞いた事があります。
すでに雌犬のフェロモンの匂いを知ってしまい、脱走などをしたオスは去勢したところで効果が望まれない確立は高いのではないのでしょうか?

自然界の、狼のケースを調べてみたのですが、アルファの雄と雌のみが交尾できてその他は出来ないと聞きました。
ということは、自然界でアルファ以外の雄犬はじっとフェロモンの匂いに耐えて過ごしているのでしょうか。
もしそうであるならば、飼い犬もそれが出来るのでしょうか?そうしつける事が出来るのでしょうか?
我慢というストレスで、寿命を縮めてしまうような事があれば、それは望まないのですが、対策が見つかりません。

雌犬発情時の雄犬の精神、肉体状態と対策を動物学の見地からお教え願います。


お答え

まずは脱走してしまったワンちゃんが戻ってきて何よりだったと思います。発情した雌犬についていって帰れなくなった犬の話もよく聞くからです。

「しつけによって、発情雌についていかないようにできるかどうか」という件ですが、「不可能ではないが、かなり難しい」というのがお答えになるかと思います。たとえば、一般的に賢くて厳しくしつけられると考えられている警察犬や盲導犬などであっても、雌犬による混乱を防ぐために、早期に去勢が適用されます。発情した雌犬に興奮することには、かなり本能的な部分が関連するので、それをしつけで解除することは難しく、仮にできたとしても犬にストレスを強いることになると思います。
これを抑えるためには去勢が一番有効とされています。アメリカにおけるアンケート調査によると、犬における放浪癖(脱走)では、去勢によって90%以上の改善を感じた飼い主が4割程度、50%程度の改善を感じた飼い主が7割弱ということが報告されています。

マーキングやマウンティングについても同程度の効果があります。こうした行動には学習効果(脱走して楽しかった、気持ちよかったなどということを感じれば、再度脱走してしまいます)がありますので、○○さんが心配しているように、何度も経験を重ねると去勢だけでは治らない可能性も出てきます。細かいデータはありませんので確実なことは言えませんが、おそらく先のアンケート調査で改善を感じない飼い主の犬はすでに何度もマーキングや脱走の経験をしていたのかもしれません。ただし、○○さんのワンちゃんの場合はまだ2歳とのことですから、改善する可能性は高いと思います。
未去勢の雄は、自分の縄張りを守るために、常に神経を張って暮らしています。発情した雌犬の匂いだけではなく、あらゆる匂い(たとえば自分を脅かすかもしれない雄犬の匂いなど)について監視しなければならないからです。確かに脱走という問題に対してだけなら、しっかりとした柵をつくることなどで防げるかもしれませんが、しつけによって防ごうとなると、○○さんも心配されているように、ワンちゃんのフラストレーションを解消してあげることは難しいでしょう。去勢をすると、こうした警戒心をある程度ほどいてあげることができます。たとえ、○○さんのワンちゃんの脱走に、100%の改善効果が望めないとしても、警戒心や緊張を多少なりともほぐしてあげることができると考えれば、去勢も悪くない選択肢だと思います。

またオオカミの件ですが、基本的にアルファ(オオカミの群れの中で最優位の個体はアルファと呼ばれる)のオオカミがいる場合は、それより弱い雄オオカミの精巣の働きが抑制されていることがあります。そうなると我慢以前に、フェロモンの匂いにそれほど反応しなくなります。世の中の雄のワンちゃんの精巣の発達程度についても個体差があって、あまり発達が十分でなければ、発情した雌犬にそれほど興奮しない場合もあります。そうしたワンちゃんであれば、しつけによって脱走を防げる可能性は上がってくると思います(○○さんのワンちゃんは脱走までしているのでしっかり精巣が発達していると思いますが)。犬の行動は、飼育状況によってかなり変わってきます。私自身が○○さんのワンちゃんを見ていないので最終的な判断を下すことはできません。○○さんがワンちゃんの幸せを一番に考えてあげて、最良の選択をされることを祈っております。

武内ゆかり(東京大学獣医動物行動学研究室)

連絡先 日本獣医学会事務局
officeco@jsvs.or.jp | Fax: 03-5803-7762
〒113-0033 東京都文京区本郷6-26-12 東京RSビル7階

Topページに戻る