The Japanese Society of Veterinary Science
 
学会案内
学術集会 学会誌 動物の病気 獣医学の教育 Members Area 学会賞 行政文書 賛助会員 Q&A リンク
TopQ&A > 動物の病気

Q:東京で野生のタヌキをみかけました。感染症が心配です。

 はじめまして。私は東京に住んでいる学生です。この間近所で野生のタヌキをみかけました。
野生のタヌキは病気を持っているともきいたことがあります。万が一私や飼っている犬に接触して、なんらかの病気にかかったりしないかとたまに心配になります。

お答え

1. 野生のタヌキはどんな病気をもっていて、人や犬に影響はあるのか?

野生のタヌキもヒトやペットと同様に様々な病気にかかりますが、「病気を持っている」の「病気」とは、ヒトやイヌに移る可能性のある「感染症」を意味されていると思いますので、その点について以下に説明します。
 まず、知っておいて頂きたいのは、イヌにもタヌキにもヒトにも免疫力があるので、例えタヌキが「病原体を持っていた」としても、それは即「病気」ではありませんし、もちろん、すぐに「感染」が成立するわけではありません。「病気」を予防するためには、① 野生動物を近づけない(ゴミを出さない、餌付けをしないなど)、②接触しないようにする、③手洗いやうがいをする、④靴や服を洗う、⑤イヌを洗ったり、ブラッシングなどが大切な対策です。

  1. タヌキとイヌの共通感染症
     タヌキは、イヌ科の動物で、イヌと同じ感染症にかかる可能性があります。野生のタヌキが棲む森を失い、ゴミなどに誘引され人間社会に密に集まった結果、イヌジステンパー(ウイルス感染症)やカイセン症(センコウヒゼンダニ寄生)が発生しています。この逆もあり得ることなので、やはり飼い犬を野生動物と接触させないことが最も簡単で効果的な感染症予防対策です。直接接触すること少ないと思いますが、野生動物の糞や死体の臭いを嗅がせないなど近づけないということです。ちなみに、タヌキは「溜め糞」といって、仲間で一箇所にまとめて糞をするという性質があります。散歩から帰ったら、イヌの足裏を洗ったり、ブラッシングをしたりして清潔に保つとよいでしょう。

  2. ヒトとタヌキの共通感染症
    タヌキを扱ったことでヒトに感染し、重篤な症状を引き起こすような症例は報告されていないと思いますが、糞便中の細菌など、当たり前に衛生に注意する必要があります。「感染」するわけではありませんが、密に接触すれば、一時的にカイセンダニやノミがつくこともあり得るでしょう。
    北海道のキタキツネで問題となっているエキノコックスも、タヌキで感染例が報告されています。しかし、タヌキはキツネやイヌほどエキノコックスの好適な宿主ではありません。この点でもわかるように、野生動物は接触を避けるだけで感染症の予防ができますが、むしろヒトとの距離が近くなる飼い犬の方でより注意する必要があるでしょう。

2. 感染していた場合はすぐに発覚できるのか?

 症状を出す、発症する、つまり病気になる、とわかりやすいですが、感染しても無症状な場合もあります。この場合は、抗体検査など特殊な検査を行わないと検出できません。はじめの説明とも重複しますが、野生動物との接触を避ける、手洗い・うがいなど衛生に気を付けていれば、必要以上に心配しなくてもよいと思います。必要であれば、飼い犬について、かかりつけの獣医師に相談して、各種病原体の感染の有無を調べてもらうとよいでしょう。

 最後に、野生動物の街中への出没は、私たち人間が野生動物の棲む自然環境を奪った結果、 ゴミや餌付けのために誘引して起こっています。人間が関わって、野生動物との間で感染症の発生リスクを高めてしまっています。根本的な問題解決は、人も野生動物も快適な環境づくりですので、私たちに気を付けられることからやっていきましょう。

福井大祐 (旭川市旭山動物園 獣医師 )

日本獣医学会事務局
officeco@jsvs.or.jp | Fax: 03-5803-7762
〒113-0033 東京都文京区本郷6-26-12 東京RSビル7階

Topページに戻る