The Japanese Society of Veterinary Science
学会案内
学術集会 学会誌 動物の病気 獣医学の教育 Members Area 学会賞 行政文書 賛助会員 Q&A リンク
Q&A
動物の病気や健康について

動物の薬や
医療器具について

野生動物・動物保護

獣医師の仕事について

獣医大学について

Q:犬の肝性脳症について

 犬の肝性脳症についてお聞きしたいのですが、発症原因と神経症状としてはどのようなことが表れるのでしょうか?
また症状の重症度とアンモニア濃度は必ずしも相関しないのでしょうか?(アンモニア数値が標準値でも肝性脳症の症状が表れるのですか?)
治療方法としては、どのような薬が使われていますか?アミノ酸投与も有効なのでしょうか?
どうぞ宜しくお願い致します。

お答え

私は岩手大学小動物外科の大石と申します。獣医学会あてに送られました質問、「肝性脳症についての質問」につきまして、お答えしますが、ここに全てを書くことは困難であり、お近くの獣医師の先生にも良くお聞きになってください。

  • 犬の肝性脳症についてお聞きしたいのですが、発症原因と神経症状としてはどのようなことが表れるのでしょうか?

    犬の肝性脳症の原因疾患には、重篤な肝不全(肝炎/肝硬変)や門脈体循環シャントなどがよく知られています。いずれの疾患についても、本来肝臓で代謝されるべき腸管吸収性あるいは体内代謝性の毒素が肝臓で代謝されずに脳(特に大脳皮質)に影響して異常な神経活動や神経機能不全をきたすことによります。 肝性脳症発生の原因物質としては、いくつかの候補物質が推測されていますが、まだ特定されていません。 神経症状は非常に多様であり、必ずしも特異的なものはありません。例えば、 振戦、運動失調、ヒステリー、痴呆、性格異常(攻撃性)、旋回運動、斜頸、盲目、ケイレン発作などがよ知られており、時に食後等に多く見られる傾向があるといわれています。

  • また症状の重症度とアンモニア濃度は必ずしも相関しないのでしょうか?
    (アンモニア数値が標準値でも肝性脳症の症状が表れるのですか?)

    臨床徴候の重症度と高アンモニア血症の程度とは必ずしも相関しません。ヒトにおいても「必ずしも相関するものではない」と表現がされています。
    高アンモニア血症での神経症状には、アンモニア値が高いことに加えて、メルカプタンや短鎖脂肪酸などの毒素の協同作用が考慮されていて、脳の神経伝達物質や神経細胞の膜生理現象を変化させるとの解釈がされています。つまり、他の神経刺激性物質とのバランスをも考慮する必要が示唆されています。また、高アンモニア血症に起因するグルカゴン放出が脳内アミノ酸バランスを変えてしまうことも抑制性神経伝達物質産生を促進することにつながるとして、神経症状助長への関与の可能性が考えられています。 したがって、高アンモニア血症という状況にある場合には、アンモニア値のみで神経症状の重症度を測ることは困難で、その他の因子も考慮しなくてはならないということです。

  • 治療方法としては、どのような薬が使われていますか?
    アミノ酸投与も有効なのでしょうか?

    外科的な立場から門脈シャントのような病態を考慮するなら、第一選択は原因の除去、すなわちシャント血管の外科的閉鎖ということになります。しかし、中には、外科手術の困難な症例もあり、その場合、肝性脳症の誘因(便秘などの便通異常・高蛋白食・過剰の利尿薬・感染症・出血) となるものを極力避け、不必要な高蛋白食の摂取を戒め、便通の調整(1日1〜2回の排便があるように)を心がけるようにします。
     一般的な食事管理、薬物の投与などとしては、
    ●栄養管理:低蛋白食 → カロリー源を炭水化物主体とし、蛋白質を必要最低限とする
    ●アンモニア生成性腸内細菌の抑制:抗生物質投与
    ●結腸内アンモニウムイオン封じ込め:ラクツロース 0.5 L/kg PO tid
    ●アミノ酸不均衡の是正:アミノレバン(高アンモニア血症用アミノ酸調整剤)の点滴
     ヒトでは、分岐鎖アミノ酸レベルを上昇させるために、分岐鎖アミノ酸を高濃度に含有する特殊組成アミノ酸輸液剤を3〜5時間程度点滴静注し、脳におけるアミノ酸やアンモニア代謝の異常を是正します。特に、血漿分岐鎖アミノ酸濃度の著しく低下しているとされる慢性型の病態では覚醒効果が期待できるとされています。意識レベルに問題がなければ、分岐鎖アミノ酸含有量が多い肝不全用経口栄養剤を使用することもあるようです。犬においても、アミノ酸バランスの不均衡は提唱されておりますので、アミノ酸投与療法の有効性は十分考慮できると思いますが、犬での投与効果については明確ではありません。

岩手大学農学部獣医学課程小動物外科研究室 大石明広

連絡先 日本獣医学会事務局
officeco@jsvs.or.jp | Fax: 03-5803-7762
〒113-0033 東京都文京区本郷6-26-12 東京RSビル7階

Topページに戻る