The Japanese Society of Veterinary Science
 
Q&A > 野生動物・動物保護・仕事について
Q:野生動物に関する3つの質問
1.野生動物保護の目的は、希少種の保全だけが目的なのでしょうか?
2.今、世界のいたるところで感染症の研究が進められていると思います。例えば、そのような研究はどう野生動物に役立てられるのでしょうか?それとも、野生動物は感染源として研究されているのでしょうか?
3.野生動物の保護と言っても一概に方法は無いと思います。例えば、大学で感染症に関する研究室に進んだとすると、他の面(例えば、公衆衛生の面)からも保護に関わりたいと思っても知識不足として活動は出来ないんでしょうか?やはり、そういう場合はどれだけ自主的に勉強するかにかかってくるのでしょうか?

お答え

1.野生動物保護の目的は、希少種の保全だけが目的なのでしょうか?

回答:
野生動物保護(保全)は、必ずしも希少種の保全だけが目的であるとは限りません。もちろん希少種保全の場合には緊急性が求められますので、他の問題より優先的に政策が行われますが、けっしてそれだけが保全活動のすべてではありません。最終的な目標は生物多様性の保全が図られることにあります。すべての生物(場合によっては非生物も)はお互い関連をもって生きていますので、すべての生物種が生態系の中で何らかの役割を果たしています。そのような生態系を丸ごと次世代に残していくことが肝心です。ご指摘のアフリカのような大型哺乳類(ゾウ、キリン、サイなど)が今でも残されている地域では、より広い範囲をカバーして生態系が保全されるべきでしょう。このことは、地域の野生動物のみならず地球上に生きる生物(人を含めて)にとって重大な意味があることだと考えます。そのような考えの元に、地元の方々はボランティアも厭わず動物の保護に努められているのだと思います。Act locally, think globallyという言葉がありますね。

2.今、世界のいたるところで感染症の研究が進められていると思います。例えば、そのような研究はどう野生動物に役立てられるのでしょうか?それとも、野生動物は感染源として研究されているのでしょうか?

回答:
世界中にみられる感染症は、多くの場合、野生動物では重篤な病気を引き起こしません。それは、進化の中で、ウイルスや細菌などの微生物と野生動物とがうまく共生してきたためで、人や家畜で見られるような症状を引き起こさないので、どのような感染様式をしているのかわかりにくくなっています。したがって、人や家畜(ペットを含む)にみられる感染症の感染ルートや病原体の存在様式について野生動物を調べる必要があり、そのような観点での研究が多いと思います。しかしながら、時にこれまでなかった動物間の接触が発生したり(外来種の侵入や人間による人為的な移動など)、感染ルートが生じたりすると、野生動物にも重篤な病気をもたらすことがあります。そのような状況が起こっていないかどうかを常に監視する調査は重要です。とくに希少種がそのような感染症に罹ったりしては絶滅要因にもなりかねません。このように、感染症を考える場合には、人、家畜および野生動物の健康、いわゆるワン・ヘルスという概念を適用して考えるのがいいと思います。

3.野生動物の保護と言っても一概に方法は無いと思います。例えば、大学で感染症に関する研究室に進んだとすると、他の面(例えば、公衆衛生の面)からも保護に関わりたいと思っても知識不足として活動は出来ないんでしょうか?やはり、そういう場合はどれだけ自主的に勉強するかにかかってくるのでしょうか?

回答:
はい、多くの側面で野生動物の保護に関わりたいのであれば、それだけ豊富な知識と経験が必要になってきます。感染症のみならず、生態、生理、繁殖、公衆衛生、毒性などの自然科学に加えて、最近では人と動物の関係や人間側の問題といった社会科学的な面でも野生動物との関わりがみられ、その領域は拡大しています。一人の人間が専門に関われる分野はそう多くはないと思いますが、野生動物についての広い視野と知識は持っていた方がいいと思います。そのためには異分野の研究者の話を聞く機会をもつとか、いろんな分野の書物に目を通すとか、個人レベルでできることはたくさんあると思います。ただ一方で、自分の専門というものも大事で、学部や大学院などでの勉強を通じて自分の専門性を高めることもお奨めします。

北海道大学大学院 教授 坪田敏男
(2013/12/10掲載)

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