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Q&A > 野生動物・動物保護・仕事について

Q:猫用のハウスに入った疥癬(かいせん)タヌキをどうしたらいいのか

現在飼い猫2匹とベランダの下の居候猫4匹,そしてご飯だけを食べに来る地域猫10匹前後の面倒をみております。
ところが,ここ2、3年前から,夜になると地域猫達の残したご飯を食べに3頭ほどが来るようになりました。
(近くの土地開発に伴い,その森に住み着いていた狸なのか,餌となるものが無くなったのか)

幸い猫達との接触や争いもありませんでしたが,3頭の内の1頭が明らかに疥癬症だと思いますが,首から上以外体中の毛が抜け落ち,まるで象のように丸裸で,寒さでガタガタ震えながらも食べ終わるとおとなしく帰って行っておりました。

ところが先日の明け方,ベランダの下の居候猫にご飯を持って行きましたところ,何と!その丸裸の狸がその猫のハウスに入っており,お互い仰天してしまいまして…。
丸裸でさぞかし寒いのでしょうか。雪が降った今朝もそして今も,温かなハウスに入ったまま,ご飯を食べる時だけどうやら外に出ているようです。

若い狸なのか皮膚は綺麗で,産毛が生えつつあるようにも見えますが,しかし強烈な臭いです。
このまま我が家に住み着かれては,猫達の暮らしも少なからず脅かされますし,私達人間にも猫達にも疥癬症が移ったらそれこそ大変です。
しかし森の開発により行き場も餌もなくなり,また疥癬で病んでもおり,このおとなしい狸を何とか助けてあげたいのですが,どうしたら宜しいものでしょうか? どうぞよろしくお願いいたします。

お答え

猫用のハウスに入った疥癬タヌキをどうしたらいいのかという質問ですが、その背景には2つの問題があると思います。
一つは、野生動物であるタヌキが疥癬症に罹ったのでそれを治療するべきか否かという問題です。
もう一つは、野生のタヌキに餌を与えて(この場合ネコに餌を与えているつもりがタヌキもやってきたということでしょうけど)餌付けをしている問題です。

まず前者の問題ですが、人為的なことが原因で病気にかかったり怪我をしたりした場合には、人間の責任においてこれらの動物を治療して野生復帰させることは理に適っていると思います。一方で、野生で自然に営まれる動物の行動や病原体伝播の結果,病気になった野生動物については人が手を出すべきでないと考えます。しかしながら、その因果関係がはっきりしないことが多く、間接的に人間活動の影響を受けている場合も少なくありません。したがって、よほど人為的な影響を受けていない原因が明瞭である場合を除いて、野生で動物が弱った状態で発見されるとすべて救護の対象となっているのが現状です。今回のような疥癬症もこのような因果関係が不明確な一例だと思われます。もしかしたら愛玩動物から野生動物に感染したのが発端で、野生界に広がった可能性も捨てきれないからです。ということで、疥癬症は多くの場合、救護の対象とされますので、各都道府県に設置されている鳥獣保護センターや傷病鳥獣救護の委託を受けた動物病院や動物園で引き受けてくれるはずです。県の鳥獣行政の担当窓口にお問合せしてみてください。ただし、野生のタヌキを捕獲すること自体が困難かもしれないことを申し添えます。

2つ目の問題ですが、結果的ではあるにせよ、野生動物に対して餌を与える行為は肯定されるものではありません。それは、餌を与える行為が一時的に動物の危機を救っても、長い目で見れば動物(群集や個体群レベルで)を窮地に陥れることが多いからです。
例えば、彼らの最も重要な行動である採食行動を自然本来のものから歪めたものにし、人から与えられる餌なくして生きていけないような習性になってしまうとか、疥癬症を引き起こすヒゼンダニ以外の病原体を伝播させる可能性があります。基本的に、野生動物は人の力を借りずに行動し生きていくものですので、感情に流されて安易に餌を与える行為は慎むべきと考えます。仮に、その結果、野生動物が死に至るとしてもそれが自然の中で営まれている進化の流れですし、死んだ動物からの恵みを受けている生物がたくさんいることも忘れてはなりません。動物の死は自然界では決して無駄には終わらない、そういうシステムが存在します。動物の死=かわいそうな結末と考えるのではなく、健全な自然の循環の一部と考えて自然の流れに任せることが必要ですし、そのような営みを大きな視野で眺めてみませんか。
ということで、ネコだけに餌を与える工夫を施し、野生のタヌキには餌を与えないでください。

坪田 敏男(北海道大学大学院獣医学研究科)

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