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Q:ひどい飼い主に飼われている犬を救いたい…

Q&Aのページを拝見して質問なのですが、知人の近所にひどい飼い主に飼われている犬がいると聞きました。お散歩は連れて行ってもらえず、小屋も屋根もなく地べたに寝ている可哀想な犬がいると聞きました。去年の雪が降る時は雪の上に寝ている犬を見かねて知人は毛布を敷いてあげたそうです。飲み水も汚いバケツに雨水のような不潔な水があるのみと聞きました。地元の動物のボランティア活動をしている会に相談した所「保健所に連絡した方がいい」と言われただけだったそうです。今の法律でその飼い主を罰せたりできるのでしょうか? 何か助けられる事は何でもしたいのですが、何をすればその犬はその飼い主から救われるのでしょうか?是非教えてください。今日初雪が降りました。この地域は日本有数の豪雪地帯なので本格的に雪が降る前に屋根のあるところで過ごさせてあげたいです。

それともうひとつ質問です。最近オーストリア出身の人と動物保護について話す機会があったのですが、向こうでは動物の生活環境や権利保護・シェルターなど日本と違いとても進んでいると感じました。私は今高校2年生なのですが、獣医系の大学に進んで、ヨーロッパのように動物との共生が進むような勉強や研究がしたいのですが、そのためにはどの大学に進学すればよいのでしょうか?
よろしくお願いします。

お答え

「今の法律でその飼い主を罰せたりできるのでしょうか?」とのご質問ですが、その「知人の近所の飼い主」の動物の飼い方が「動物虐待」、すなわち「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者、あるいは愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行った者」であれば、現行の『動物の愛護及び管理に関する法律、第27条』により懲役または罰金刑に処せられます。
問題は、今回の「飼い主」が法律に触れる動物虐待者にあたるか否かということになりますが、文面からでは情報が少なく、印象としては難しいと思います。明らかに暴行を行ったり、傷つけたり、水・餌を与えない、等があれば、「虐待」と判断できますが、ずっと繋がれたままとはいっても、夜中や早朝に散歩させているかもしれません。小屋や屋根も犬種によっては問題ない場合もあります。外イヌの場合、水の汚れの程度の判断は難しいです。飼い主がどのように考えていて、どういう飼育実態なのかをあなた自身が正確に知る必要があるかと思います。
では、法的に罰せないとしても、「何か助けられる事は何でもしたいのですが、何をすればその犬はその飼い主から救われるのでしょうか?」と思うあなたの気持ちは変わらないのでしょうし、そう思う気持ちはとても大切です。しかし、これも難しい問題です。というのは、そのイヌは他人の飼い犬であり所有物であるからです。飼い主の許可があれば別ですが、許可なしに何かをすれば他人の所有物に勝手なことをした、ということになり、今度はあなたが罰せられるかもしれません。やはり、もう少し実態を把握し、あるいは飼い主と話し合い、対応していくことが大切だと思います。そうすれば自ずとあなたにできることが見つかると思います。

 次に、2番目の質問、「獣医系の大学に進んでヨーロッパのように動物との共生が進むような勉強や研究がしたいがどの大学に進学すればよいか」について。
おそらくあなたは『動物との共生』を勉強・研究する上で、まず、動物のことを学ぶ必要があると考えて獣医科大学への進学を希望されているのだと思います。そして、あなたが対象とされている「動物」はイヌばかりではなく広く哺乳類、鳥類、爬虫類、両棲類、そして魚類や昆虫までも含んでのことと思います。愛玩動物として確立されているものもあれば生態も明らかでないものもいます。人との共生においては人獣共通感染症も考慮しなければなりません。したがって、生態や解剖・生理学だけでなく、微生物学や公衆衛生学なども学ぶことが必要とされ、いわゆる基礎および応用獣医学が重要になってきます。また、傷ついたり病気の動物たちの治療にあたることも必要でしょうから、当然、臨床獣医学も重要です。すなわち獣医学教育を受けることが必要になるわけですが、そのような観点からですと基本的にはどの獣医科大学に入学しても獣医師になるために学ぶ内容にはほとんど違いはありません。また、『動物との共生』は大変多岐にわたる問題であり、異なる立場、異なる環境、様々な行政的問題も絡んでいます。自分と違った意見を持っている人達がいることを認め、その意見に耳を傾け、立場の違う人が違った考えを持つことを尊重しあい、その上であなたが自由な意志の元で自らの考えを形成していくことが大切だと思います。あなたが考えておられるような『動物との共生』には行政や地域住民の問題が関連し、残念ながらこれらについて答を用意している獣医科大学は少ないと思います。ですから、どの大学に進学したらよいか、ではなく、まずはきちんと獣医学を学びながら、『動物との共生』をどうとらえ、何が必要とされ、何ができるのか、ということの正確な情報を入手されていったらよいかと思います。動物愛護、または生態環境系を含めた野生動物などの動物保護という観点からは『ヒトと動物の関係学会』あるいは『日本野生動物医学会』等から情報を得るのも1つの手段かもしれません。

神戸大学農学部応用動物学科 形態機能学教室 星 信彦

連絡先 日本獣医学会事務局
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