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:エゾシカの避妊薬の情報を探しています

 北海道東部ではエゾシカが異常繁殖して農林業被害が多発しています。捕獲による頭数削減を実施していますが、思うような効果が出ていない状況です。生息数管理の今後の検討課題として、繁殖抑制を考えざるを得ません。捕獲して避妊手術をするのは手間と経費がかかりすぎるので現実的でありません。
 そこで避妊薬の情報を探しています。できればエサに混ぜて散布できる経口薬が望ましいところですが、それ以外でもかまいません。エゾシカに有効な避妊薬の情報、及び薬品が他の野生動物に与える影響、またこうした薬品の使用に関する規制等わかる範囲で教えてください。
お答え

 シカ類の増加は北米でも大きな問題となっており,アメリカ合衆国の国立野生生物研究センターなどでも「薬剤による繁殖抑制」が試行されています(下記を参照してください)。
http://www.aphis.usda.gov/ws/nwrc/research/pd_research.html

 しかしながら,現状ではあくまで実験段階にあり,効果が期待されるものでも「捕獲(生け捕り)」が前提となってしまいます(経口的な薬剤ではないためです)。また,効果を持続するには,再投与が必要な場合があることも指摘されています。そのため,生息数管理に応用するのであれば,莫大な数の個体を継続的に捕獲しなければならず,コストの面からも現実的とは言えません。さらに重要な問題は,これらの薬剤は食品医薬品局の認可も得られておらず,使用は「調査・研究」に限られていることです。したがって,投与した個体を食用に供することは認められず,これでは北海道で進行しつつある「有効活用」とも整合性が取れません。

 以上の点から,現段階では,コスト,労力,効果,効率,安全性の全ての点で,エゾシカの生息数管理に薬剤を用いるのは適切ではなさそうです。むしろ,捕獲に経済的インテンシブを付与し得る「自然資源としてのエゾシカの有効活用」に打開策を求め,獣医学としても「安全のシカ肉の供給」のために尽力すべきと考えております。

 なお,自然保護の側面からも,「野生動物の活用」は必ずしも否定されているわけではありません。昨年(2004年),IUCN(国際自然保護連盟)が出した勧告でも,「野生動物の資源的活用(狩猟も含む)が生物多様性の保全に貢献する」ことが明記されていますので(南部アフリカ諸国を対象としたものではありますが)。

北海道大学・鈴木正嗣

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