The Japanese Society of Veterinary Science
 
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Q1: 動物って人より骨折の治るスピードって早いの?

 広島県内の大学生です。中学生の弟の学校で飼っているウサギが骨折したらしく、その話題の時に「動物って人より骨折の治るスピードって早いの?」と素朴な疑問をぶつけられました。確か僕の記憶だと、"ウサギは人間の3倍早い"と聞いたことがあったのでひとまずそう答えたのですが、「犬とかネズミとか猿とかも違う?」と色々聞かれて、困ってしまいました。
好奇心の強い弟を満足させてあげよう、と思って、インターネットや図書館で色々調べてあげたのですが、なかなかわかりません。
厚かましいお願いですが、教えていただけたら幸いです。また、その手のことに関する参考資料等ありましたら教えて下さい。自分が気になってしまいました。
よろしくお願いします。

お答え

 ウサギの骨折治癒を代表として、動物種で治癒速度が異なるのか?という質問ですね。残念ですが、明確にお答えできる資料を探し出すことはできませんでした。そこで、生物学的な視点と臨床的な視点の二つに別けて、私なりの意見を述べさせていただきます。
生物学的には、動物の体の大きさは、その寿命をある程度規定しているようです。細胞個々の大きさは、動物種による違いがほとんどないので、体の大きさは、細胞数の違いであると言えます。例えば、象が大きくなるのに費やす時間はマウスとは比べようなく長くなります。逆に、体の一部が損傷・欠損した場合には、同じ能力の細胞が修復するとして、損傷・欠損した間隙が大きいほど長い時間が必要だと思われます。つまり、ウサギの骨折治癒に要する期間が、人の場合に比べて短い理由になるかと思われます。教科書によっては、ウサギの骨折治癒は早いと記載されている所以ではないでしょうか。
次に、臨床的な視点からです。私は犬や猫に携わることが多いので、例として犬・猫を挙げます。一般的に猫の骨折のほうが治癒は早いと思います。個々の骨折の治癒期間は、動物の年齢、骨折部位、骨折の種類などによって様々ですが、犬・猫共にほぼ同じ治療が選択できることが多いので、両者の比較が可能です。たとえ、骨折の端と端が2cmほど離れていても数mmの距離に近づけて固定することが可能です。結果として、治癒が早く、正常な機能を回復することができるのです。また、治癒期間が長期化したとしても、日常生活に支障をきたすことが少なくなります。ところが、ウサギの場合、骨折整復治療の選択肢は多くありません。治療期間中には骨折部が動かないで、かつ適度な力が加わることが必要ですが、長期間の固定が困難なため、ウサギの骨折整復は決して容易なものではありません。結果として、積極的に人の手が加えられないために、治癒が長期化することがあります。ですので、治癒が早いはずだから治療が犬・猫に比べて容易であると思うのは誤りだと思います。
少しまとめますと、折れた骨と骨の距離が短いことが多い小型動物は、大型動物よりも骨折治癒が早いと思われますが、体が小さい分、人為的な整復はかえって困難さが伴うと思います。
ほぼ同一条件で比較した資料は見つかりませんでしたので、経験に基づいた私見を述べました。学会員の中で明確な回答可能な先生がいらっしゃいましたら、追補お願いします。

Q2
お忙しい中、詳細なご回答ありがとうございます。大変勉強になります。
その動物個々の体の大きさと比べて傷の大きさの割合が大きい程治るのに時間がかかる、という認識でよろしいのでしょうか?
ところで、動物によって、例えばネズミが人間に比べて寿命の短い所以は、代謝のスピードが違うせいだ、と聞いたことがあります。そのような代謝のスピードが治るスピードに影響することは無いのでしょうか?
例えば、骨に同じ大きさの穴ができた場合、動物種によって治る速度に違いがある!?ことって無いんですか?いただいたご回答によれば、それは無いということになりますね。
面倒な質問をしてしまいすみません。
お答えいただけたら幸いです。


お答え

>その動物個々の体の大きさと比べて傷の大きさの割合が大きい程治るのに時間がかかる、という認識でよろしいのでしょうか?

限界はあるでしょうが、傷の大きさが大きいほど治癒期間が長くなるということです。

>例えば、骨に同じ大きさの穴ができた場合、動物種によって治る速度に違いがある!?ことって無いんですか?
>いただいたご回答によれば、それは無いということになりますね。

否定はできませんが、大差はないと思います。といいますのは、細胞を培養してみますと、細胞の種類によって増殖する速さは様々ですが、類似細胞ですと動物種による違いはあまりないからです。

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