The Japanese Society of Veterinary Science
学会案内
学術集会 学会誌 動物の病気 獣医学の教育 Members Area 学会賞 行政文書 賛助会員 Q&A リンク
Q&A
動物の病気や健康について

動物の薬や
医療器具について

野生動物・動物保護

獣医師の仕事について

獣医大学について

Q:獣医の仕事のやりがい、苦労、将来性など…

今、職業調べをしています。僕は中学1年生です。僕は将来、獣医になりたいと思っています。
  1. その仕事の楽しさ、やりがい
  2. 苦労やつらいこと
  3. どんな人に向いているか
  4. その仕事の将来性など

を教えてもらえますか? よろしくお願いします。

お答え

獣医師と言うと、「動物のお医者さん」で代表される、動物病院の獣医師を想像されているのだと思います。もう少し広げても動物園や牛や馬などの獣医師でしょうか。
 しかし、獣医師は一般社会の色々な分野で活躍しています。
 例えば、今世間を騒がせている狂牛病(BSE)や鳥インフルエンザなどの問題では獣医師が活躍しています。このように食品衛生や環境衛生の分野をはじめ製薬会社の薬品開発や毒性試験などの基礎研究の分野などでも獣医師は社会貢献しています。
 もっと変わったところでは、動物行動学(人間も動物です)を応用してスーパーマーケットの商品展示(お客さんが全ての商品の前を通るような配置)をアドバイスしている獣医師もいます。
 このように獣医師の領域は広いので、今回の質問には、動物病院の獣医師に対する質問として答えさせていただきます。

  1. その仕事の楽しさ、やりがい
     この仕事での喜びは、病気に苦しんでいた動物が治ったときでしょう。
     動物は人間のように、お腹が痛いとか、苦しいとか、何処がおかしいか話してはくれません。しかし、表情やしぐさなど身体で色々と訴えています。
     その動物が訴えている苦痛や異常を示す症状をくみ取り、その断片的な情報をパズルのように組み立て、推理小説の探偵のように推理することで、まずは循環器の病気なのか消化器の病気なのかを分類し、さらに病気の原因をふるい分けながら治療し、問題を解決してゆくのが臨床獣医師の仕事です。ひじょうにやっかいな病気を苦労しながら情報を集め、推理して動物の病気の原因を究明し、治療して症状が改善したときの達成感は他の仕事ではなかなか味わえないものです。
      
  2. 苦労やつらいこと
     動物も長生きになり、高齢な動物の診療が増えています。高齢な動物も人間と同様、癌など治すのが困難な、又は有効な治療法のない病気も多くなっています。
     一番困るのは濃厚な治療をしていれば悪くはならない、しかし、治療程度を落とせば悪くなってしまうケースでしょう。
     治療を止めれば死んでしまう可能性が高い。しかし、治療を続けて延命することは、見方を変えれば苦痛の期間を長くしているだけ。
     このようなときには動物の場合は「安楽死」と言う方法があります。最近は「尊厳死」と言うようですが…。
     欧米人とくにヨーロッパでは、治療費及び治る確立などで、ドライに割り切って「安楽死」を選択するようです。しかし、ドライには割り切れないのが日本人です。飼い主さんの心の中を察しながら対応しなければなりません。また、飼い主さんが後悔するような形で動物が亡くなると飼い主さんの心の病気が起こってしまいます。「ペット・ロス」と言います。
     ペット・ロスとは、亡くなった動物に対し、「あの時こうしていれば…」「あの時にあんな事をしなければ…」などと後悔し、自責の念にかられることから起こります。その様なことは後で考えればいくらでも思い当たることはあるものです。
     さらにこの病気は、「動物に対する自分の考えを他人はどう考えるか?」「動物ごときにバカじゃないかなどと変な目で見られるのではないか。」と考え、心を閉ざしてしまうことで飼い主さんの心の病気は更に悪化してしまいます。
     私の所でも「天国の・・チャンから先生に手紙が届いてます。読んであげて」と手紙を持ってこられる飼い主さんがいます。このようなケースは軽症です。なぜならば、心の中のものを出す相手として使ってくれる訳ですから。
     動物への医療だけでなく、飼い主さんの心のケアまでが我々の仕事です。
     いずれにしろ、我々は動物の死を避けては通れません。神経を使う・報われることがない一番つらい仕事です。
     
  3. どんな人に向いているか 
     動物を相手にするわけですから、基本的には動物が好きでなければできません。しかし、溺愛するタイプの人は思いきった決断ができなくなりますので向かないかもしれません。
     言葉を話さない動物を相手にするのですから、身体で何を表現又は訴えているのかを観察力と思いやりの心で判断できなければなりません。やはり思いやりの心がもっとも必要な要素だと思います。
     しかし、現実的には獣医科大学を卒業して、国家試験に合格しなければ獣医師にはなれません。近年、獣医学科の入学試験の偏差値は私立大学でも70前後と非常に高く、狭き門になっています。
     まずは、国立大学・医学部に合格できる程度の学力を身につけていなければなりません。
     
  4. その仕事の将来性などを教えてもらえますか?
     最近は人間同士の付き合い方がどんどん変わってきています。
     都会化し、核家族化が進むとともに近所付き合いがなくなり、隣の人がどんな人かも判ら無いのが当たり前になっています。つまり、身近にいて一緒に楽しく話をしたり、安心して何でも相談するような相手が少なくなってきているということです。その結果、話をして、また安らぎの時間をともに過ごす相手として動物を求める人が増えているようです。
     もっと身近な例を挙げると、仕事から帰宅したときに出迎えてくれるのは犬や猫だけというお父さんが非常に多くなっています。
     しかし、家族がいればまだしも一人暮らしの方などでは家庭にいる動物だけが唯一心を許せる、心を癒せると言う人がどんどん増えています。
     今後、このようなニーズは増えることはあっても減る事はないでしょう。
     最近はペットロボットやパソコンの動物飼育ソフトなども増えてきましたが、それは生きた動物の代用でしかないでしょう。

清水 誠(東京都開業)

連絡先 日本獣医学会事務局
officeco@jsvs.or.jp | Fax: 03-5803-7762
〒113-0033 東京都文京区本郷6-26-12 東京RSビル7階

Topページに戻る